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2014. 10. 18  
yamanami


群青10月の課題
漢字一文字【山】をテーマに書いた作品



遠い山並みを仰ぎながら
車の助手席に座っている

あれは何て名前なの
高い山だねぇ…
どの山も名前がついてるのかしら
そりゃぁそうだよ

などと思いついた会話をして
この空間にいるふたりの幸せを
確認している


めくるめく思いで
走りつづけたこの幾歳月

何年ぶりだろう
こうして無の境地で
景色が眺められるのは…

今この時を
大したことと感じないのは
自分のいつもの癖。
でも必ず
懐かしみ涙する時が来るだろう


たゆみなく時は刻まれ
わたしたちは
永遠への道を歩いている





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2014. 10. 08  
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https://www.flickr.com/photos/nagoyacamera/8682913045

漢字一文字【猫】をテーマに書いた作品

三十年あまり前のことになるが、うちには猫が三匹いた。
二人の子供は物心ついてからずっと猫を欲しがっていたが、部屋が汚れるからと飼うことを許さなかった。

でも彼女らが小学生になりひょんなことから黒い猫を飼うことになったのである。
名前は*みゆき。
とてもよくできた猫で大人しく生きていたが、成猫してからみゆきは一匹の白い雌猫を産んだ。
白い子猫の名前を*プヤと名付けた。

プヤは子供を産まなかったが、母猫のみゆきが産んだ弟ができた。
弟の名前は*ミータ。
白と黒のぶちでどっしりと太い猫だった。

三匹の猫たちはとても仲良く暮らし、人間の子供ふたりにもとても可愛がられた。

猫たちは子供たちが高校生になるまで一緒に住んでいた。
当時は居間に電気炬燵を置いていたので、寒くなると猫もその中に入って寝ていた。


田舎のことだから三匹の猫はうちの庭から近所の家の裏山の道をのたりのたりと並んで歩いて散歩していた。
そこここに長い生き物がいて、三匹の猫のどれかがくわえて家に持ち込むこともあったのでそのことだけは恐怖の種だった。

或る日、となりの部屋のダイニングキッチンのテーブルの下で三匹が何かを囲んでいた。
よく見ると真っ黒い長い生き物だった。
そういう時助けてもらえるのは家の主しかいない。

また或る時見た恐ろしい光景――。
それはうちにはトイレの裏に狭いスペースがあったが、そこに三匹の猫がすごい剣幕で囲んでいたものがあった。

家で飼っていたクロというおとなしい犬を囲んでいたのだ。
クロは三匹の猫に睨まれて仰向けになり震えていた。

クロは子供が学校からの帰り道で拾ってきてからずっとうちで飼っていた犬で、お利口さんだと近所の評判はとてもよかった。そんなにおとなしい犬をいじめるとは、現代の子供のいじめを先取りしていたのだろうか。


猫は死に顔を見せないといわれるが、母猫のみゆきが一番先にいなくなった。
そのころ我が家と近所の家は高速道の設置が決まって立ち退くことを要請されていた。

また雄猫のミータは生猫になるにつれて、外に出たまま家に帰ってこない日が度々あった。
ミータがいなくなると大騒ぎするのは次女だった。
何日も待って、帰って来ると私までほっとした。

私達家族の新しい転居先の準備が整うと、少しずつ荷物を運び始めた。

家にいつもいる白猫のみゆきは心配することは何もなかった。

一方ミータはほとんど家にいない。
人づてに聞いたところによると少し遠い家で寝泊りしているらしかった。
雌猫と好い仲になり、またその家の家人も受け入れて可愛がっていたのだろう。

ついにうちの住人全員が新しい家に行く日が近づいてきた。
なのにミータが戻っていないのだ。書き置きをしていくわけにもいかず私達は思案に暮れていた。
ミータを置き去りにして引っ越しをすればもう二度と会えなくなることを思うとやりきれない……、そういう気持がみんなにはあったのだ。

でも転居の日はもう決められていた。

そんな或る日「ニャ~」という声が裏口から聞こえた。急いで戸を開けるとそこにミータが帰っていたのだ。

おお~、帰ったのか。よかった、よかった。うちの者みなが大喜びしたのは言うまでもない。

その晩ミータはいつものようにどっしりと構えて家にいたのだ。
そのさまは立派に成長した男の貫禄があった。

それから数日は姉のプヤはミータを舐め回し、歓びに充ちた日々が過ぎた。

そして転居の日が来た。

その朝ミータの姿はなかった。

私達は車で転居先まで移動した。プヤも一緒に車に乗っていた。

ミータのことを思うと後ろ髪を引かれる思いだった。

面倒を看ていた痴呆症のおばちゃんは車の中で高らかに歌っていた。

新居に移って暫くはプヤは紐でくくられていた。
知らない土地で出歩いたら迷子になるからだ。

プヤが新居に慣れたころ紐は外された。
住宅街の通りを出歩いて遊んで帰る彼女は実にいきいきしていた。

或る日リビングのソファで横になっていたときのこと――。
プヤが口に長い生き物をくわえてルンルンで帰ってきた。

誰も居ない部屋で仰天した私である。
震える手で電話をかけ職務中の主に急遽家に帰ってもらった。
主は巧く捕まえて新聞紙に入れ、近くの川に捨てに行った。

二度目に同じことがあって、主が駆けつけたときには長い生き物は流しの隙間に入って見えなくなっていた。
隙間に新聞紙を詰めて出て来れないようにしたが、長い生き物は多分流しの下でもう白骨化しているだろう、もう何十年も前のことだから……。

そんなプヤもいつの間にか姿が見えなくなった。
子供達は二人共東京へ遊学した。もうプヤのこと忘れただろうか。