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折々の記

archive: 2012年07月  1/2

虎になった男・第三編

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その1 凛子が夢うつつの中からはっきり目を覚ましたのは、もう夜の帳が降り始めた頃だった。 凛子は元の家の中にただ独り居た。 雨が上がりの庭に出てみると、そこには夜空を見上げているアッツがいた。 空には月も星も見えなかった。 「何を見ているの?」 凛子は初めて優しくアッツに声を掛けることができた。これまで凛子自身、そのような気持ちにはなれなかった。いつも怯えて、服従して、義務ともいえる家事をこなしている...

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虎になった男・第二編

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その1 凛子が虎になった男との暮らしに決別しようとしたのは、夏が過ぎて秋の風を感じるころであった。凛子の心には、アッツの世話をしなければいけないという使命と、他へ救いを求める気持ちが交互に行きつ戻りつし始めていた。 そのような時である。 凛子の処へ夜毎に翁が現れるようになった。うちひしがれている凛子に、翁は柔らかな光を注いでくれた。凛子は目には見えない白い光に包まれていた。 翁は凛子に優しく話しか...

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虎になった男・第一編

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その1 元は人間だった。 それも、とても温厚でソフトな今ならさしずめイケメンといわれるほどの風貌。 ある日突然ガォ~~っとものすごい轟声を発して虎に変身してしまった。 本来人間というのは前頭葉が働き気遣いが出来る動物を言う。虎になってしまったその男は、以来人間としては考えられないような思考と行動で生命を維持することになる。 虎になった男の元の名前はプライバシー保護の為伏せることにしてさしずめ、その名...

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肉食系男子

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その1わたしは結婚式の披露宴の時、お仲人さんから《道端に楚々と咲いていてふと手を伸ばして手折りたくなるような桔梗のような人》と紹介された。仲人さんとしては美人ではないがまあカワイ系止まりなので何とか持ち上げてやろうと数日頭をひねった挙句の表現だったのだろう。わたしの連れ合いとなる人は草食系の美男子。色が白くて茶色味を帯びた大きな眼は外国人の血が混じっているようにも見えた。物腰はソフトで誰一人《ガイ...

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より子と少女

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一章出会いわたしの名前はより子。小学校の教師として山の麓の小さな学校へ赴任してきたのは19歳の時だった。師範学校の分校の授業の合間に教育実習をさせてもらえた時代の制度に乗っかっていたのだ。自宅から通勤するのに煙の出る汽車で一駅の所にその小学校はあった。師範学校へ行くには二駅乗るのだが実習先の小学校はその途中にある。午前中に師範学校で授業を受け、午後にこの小学校に通ってきて教師として半日を過ごした。...

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