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折々の記

category: 短編小説  1/1

疑惑

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その1 桂子が亜紀と知り合ったのは桂子が22歳、亜紀が20歳のときだった。桂子が教師として勤めていた小学校で亜紀は事務をしていた。亜紀―――身長158センチぐらい。細面でよく気のつく控えめな女性だった。桂子が初めて小学校の教師として赴任し、ベテランの中年女性教師たちの嫉妬も混じった目で注目を浴びる中、唯一心の休まる相手が亜紀だった。亜紀の父親は郵便局員として勤めていたが、亜紀が中学に入ったとき庭の小さ...

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肉食系男子

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その1わたしは結婚式の披露宴の時、お仲人さんから《道端に楚々と咲いていてふと手を伸ばして手折りたくなるような桔梗のような人》と紹介された。仲人さんとしては美人ではないがまあカワイ系止まりなので何とか持ち上げてやろうと数日頭をひねった挙句の表現だったのだろう。わたしの連れ合いとなる人は草食系の美男子。色が白くて茶色味を帯びた大きな眼は外国人の血が混じっているようにも見えた。物腰はソフトで誰一人《ガイ...

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摩子

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その1静香が摩子と再会したとき、摩子はもう19歳になっていた。静香の前から姿を消したあの時の摩子は中学生で160センチあまりの背丈があり、小柄な静香は見上げて話さないといけないほど威圧感のある子だった。ここ数年摩子とは疎遠になり近況は知らなかったので静香は矢継ぎ早に質問した。「しばらくぶりね、元気だった?お母さんは元気?」「はい。お母さんは元気です。先生、今何処に住んでいるんですか?」それには確か...

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ドアノブ

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今から十五年ほど前になるだろうか。そのころ、近所の方から先祖供養を勧められ毎日お経をあげていた。月々の命日に亡くなった故人を思って経を上げられるようにと供養の会から命日記入用の冊子をもらっていたのだ。私は或る人物の命日を知りたいと思った。思い切って母に内密に内情のよく分からないお家の電話番号を調べて電話した。電話に出られたのは男の方だった。私が自分の名前を言うと、すぐにその方は「家内を呼びますから...

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